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2020.02.04 | スタッフブログ

【寒い家は免疫力が低下する④】

星 丹二先生

首都大学東京名誉教授,放送大学客員教授。福島県立医科大学卒業後,東京大学で医学博士に。東京都衛生局、厚生省国立公衆衛生院に勤務。英国ロンドン大学大学院留学、厚生省大臣官房医系技官併任を経て現職。公衆衛生のエキスパートとして『健康長寿』に関する研究を続ける。

【高断熱住宅で病気が改善する】

健康を損なう大きな要因である家の中の温度差をなくすには、断熱性能を高めることが不可欠です。

私たちがこれまで行ってきた調査からは、温熱環境が良好な高断熱住宅に転居すると、病気になる人が減少することが判明しています。脳血管疾患は1.4%から0.2%に、心疾患は2.0%から0.4%に、糖尿病は2.6%から0.8%に、アトピー性皮膚炎は8.6%から3.6%にと、どの疾患も明らかに減少しています。

なぜ高断熱住宅に住むと病気になりにくくなるのでしょうか。例えば、アレルギーが改善するのはカビやダニの原因になる結露が発生しなくなるからです。高血圧が改善するのは末梢血管が広がって血圧が安定するのが理由です。糖尿病が良くなるのは、体温が上昇して循環が良くなり、糖の代謝が正常化するためなのです。

【「ゼロ次予防」は住まいの性能が必要】

私が専門とする予防医学の分野では、病気の発生そのものを防ぐ”一次予防”、病気の早期発見、早期治療に努める”二次予防”、再発を防止する”三次予防”の3段階で疾病を防ごうという考え方が一般的です。

30年前から、私はこの3つに加えて提唱しているのが「ゼロ次予防」の概念です。生活環境、社会環境、自然環境を整備して、疾病をより本質的に予防しようという考え方です。もちろん住環境もここに含まれます。

日本で行われている脳血管疾病への対策は、減塩などの食生活改善、あるいは運動のように個人レベルで実施する一次予防と、健康診断による早期発見や血圧毒測定という二次予防に限られています。しかし、個人の努力だけで健康を維持するのには限界があります。疾病を根本的に防ぐには、住まいの断熱性を高めて、屋内の温度差を解消することが最も重要なのです。

【年金一億円を目指してすまいに投資しよう】

住宅環境の改善を健康長寿のためのゼロ次予防と捉えると、セカンドステージ世代のリファームには断熱性を向上させる工事は欠かせません。とはいえ、断熱性が高まったといってもその効果は目に見えにくいもの。費用対効果が気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

高断熱化の効果は、エネルギー消費量の削減を高別日に換算して割り出すことが多いですね。ただ、そこに「健康長寿のための投資」という観点を加えてみると、費用対効果はグンと向上します。

100万円をかけて断熱改修をして場合、何年かで費用を回収できるかと試算してみたことがあります。光熱費だけで考えると、100万円を回収するのに28年かかるのに対し、健康が維持されたことによって得られる価値を加算すると、16年で回収できるという結果になりました。健康保険からの公的負担も加味すると、わずか11年でした。健康で暮らすためにリフォームすると考えれば、人生のための「投資」だといっても過言ではないでしょう。

90歳まで夫婦そろって健在だとすると、年金の総受取額は1億円に達することをご存知でしょうか。私たちの調査では冬場の脱衣所の温度が2℃高くなると、健康寿命が4歳延びるという結果が出ていますが、この4年間を年金の額に換算するとなんと1200万円になるのです。リフォームで温熱環境を改善すると、病気になりにくい住環境が手に入ります。健康で、長生きすることができれば、先ほど述べたようにとても大きな経済的メリットを得られるのです。断熱リフォームの費用をそのための先行投資と考えたら随分とお得な話だと思いませんか。

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