第23回国際パッシブハウス・カンファレンス in Gaobaidianを終えて | 株式会社 青木建設|徳島の注文住宅からリノベーションまで

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2019.12.12 | スタッフブログ

第23回国際パッシブハウス・カンファレンス in Gaobaidianを終えて

   パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ 様

まさか国際パッシブハウス・カンファレンスが中国に行くとは、誰も思わなかったでしょう。PHIのメンバーですら、ファイスト博士のその決断にかなり動揺したと聞いています。それでも決行した中国開催。欧米だけがパッシブハウスをはじめとする建築の省エネ化に取り組んでも、もう間に合わない事を博士は痛感し、そして大きな危機感を感じているのだと思います。今回のカンファレンスの主催を任されたWindoor Cityは、Gaobaidianの窓メーカーであるOrient Sundar社が運営する窓に特化した展示会で、毎年大勢の実務者が最新の開口部の製品を見に来る場所。今年の展示会と日程をぶつける形で、第23回国際パッシブハウス・カンファレンスが開催されました。とは言え、発表内容の精査などは全てPHIが行っており、例年通りのクオリティの高い構成となりました。

日本からは総勢15名での参加となりました。

SmartWin社のフランツ・フロインドーファー氏のプレゼンテーションいつも笑いを取ります

これまでの私は、カンファレンスで自分の発表を行い、各国のメンバーと打合せや意見交換を行い、その合間にメーカーブースを物色するという関わり方でしたが、今回はなんと発表概要を審査する立場を仰せつかり、2月にドイツに渡航、夏頃に自分の発表の準備が何とか整った頃には、ワーキンググループのチェアマンの打診を受け、ドイツ語圏とは異なり勝手も良く判らない中国でハラハラ・ドキドキしながらのカンファレンス参加となりました。日本から渡航ツアーを組み、14名のPHJメンバーと共に乗り込みましたが、幸いにもスケッチアップとPHPPを繋ぐDesignPH2.0の新機能について皆で情報を収集するという目的は達成でき、換気メーカーや窓メーカーとの必要な打合せもこなす事が出来、またカンファレンス2日目のファイスト博士によるクロージング・セッションでは、私のパッシブタウン3期の実測値と設計値に関する比較の発表が、今回の80近い発表の中から優れた発表事例として紹介され、閉会の際にはなんと主催者側のメンバーに紛れて壇上に上がるという名誉な体験をいたしました。パッシブハウス・ジャパンは来年で10周年を迎えますが、何事も続けていくと良い意味で予期しない展開があるものだなと感じました。

パッシブタウン第三期街区J棟の改修前後の設計値及び、実測値の比較を発表しました。

2日目のクロージングセッションでは優れた発表事例としてご紹介頂きました。

今回のカンファレンス参加では沢山の事を考えさせられる機会を得ました。省エネに関して日本の建築業界の大きな後れを身に染みて感じました。そして私の心に強烈に突き刺さった幾つかのメッセージがあります。まず一つ目は基調講演のヴァイツゼッカー博士の「病気の進行を完璧に予測できてもその病気の治し方を知らない、役立たずの医者を何時までも頼るのは何故?」という言葉です。私達が本当に頼るべきは、どのように地球の平均気温が2℃上昇し、どのような弊害が生じるかを説明出来る人物ではなく、どのようにそれを回避出来るかを提案出来る人物だという事です。そしてもう一人の基調講演者、ダイアナ・ウルゲフォアザッツ氏による「建築部門は他の部門に比べて恵まれており、屋根の上の太陽光発電で自分達のエネルギー消費量を相殺できるチャンスがある。だからといって中途半端な性能の建築でゼロエネをアピールし、総エネ分を自分で食い潰さないで欲しいのです。建築部門がパッシブデザインを駆使して徹底的な省エネを行い、プラスエネルギー状態となり、他の部門にその再生可能エネルギーを回さなければ、もう温暖化の抑制が間に合わないのです。」という言葉も強烈でした。彼女は中央ヨーロッパ大学の教授を務め、国連のIPCCレポートの執筆にも関わる研究者です。更に一番ショッキングだったのは、ファイスト博士が会場で私を見つけるなり開口一番に放った「日本もいい加減に中国を見習って省エネを真面目にやりなさい、さもないと国際競争からは脱落するよ」という言葉。そして別れ際に残した「僕が今度日本を訪れる時は、絶対に広島を訪ねられるようにスケジュールをアレンジして欲しい」という言葉。同業である物理学者が発明した原子力技術によって、日本で多くの命が失われた過去に対する大きな責任感を感じておられる、ファイスト博士ならではの言葉でした。

皆さんご存知の通り、「省エネ運動はすなわち平和運動である」というのが私の持論ですが、平和と豊かさが持続する暮らしを次世代に残すためには、近隣諸国と良い関係を築く事が、省エネ化と同じくらい重要な意味を持つと感じています。「戦争の歴史は繰り返される」と良く言われますが、実は今の時代ほど多くの民間人が、国際的にビジネスをしたり旅行者として気軽に世界を行き来したり、SNSで海外の人と繋がっている時代はこれまで無かった筈で、このように海外となんらかの接点のある全ての民間人が、親善大使としての心持で平和の架け橋となる事が出来れば、戦争を仕掛けたい一部の権力者達の身勝手な振る舞いを抑制できると私は信じています。

 パッシブハウス・ジャパン代表理事 森みわ様からの報告です。

AOKI

 

 

 

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