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2020.02.17 | スタッフブログ

照度と視力

昔から視力は良く、メガネとは縁がありませんでしたが、さすがに年には勝てず老眼鏡を買いました。
でも「老眼鏡」という言葉があまり好きではないので代わりになる単語を調べてみると英語では ”reading glasses” リーディンググラセズ で通じるそうです。
そこで今回は照度と視力の関係について調べてみました。暗い場所で本を読んだり、書き物をしていると「目が悪くなるよ」と注意された経験のある方も多いのではないでしょうか。しかし、部屋の暗さが視力低下の原因であるという科学的な根拠はありません。
最近では、視力を低下させる原因は「近くの物を長時間見続けること」だという説が有力視されています。人が物を見る時には、毛様体という筋肉の収縮によって水晶体の厚みを調節し、対象物にピントを合わせています。
近くにある物を見続けると毛様体が収縮した状態のまま固まってしまいます。
その結果、遠くの物を見ようとしても見えづらくなったりとピントの調節機能が衰え、近視や弱視など視力の低下につながるとされています。

図1 (1985,International lighting Review参照)

年齢と明るさ
図1は視力と年齢の関係を表したものです。照度が低めの空間では同じ明るさでも、例えば20歳の人に対して60歳の人は2倍ほど明るさがないと同じような見え方になりません。しかし500~1000ルクスの高照度のもとでは高齢者と若年者とはさほど大差がないことが分ります。

図2 (D.Fischer:Optimale Beleuchtungs nieveaus in Arbeiteraumen,
Licht-technik,22,3(1970))参照

物が良く見えるかどうかの指標に照度〔lx:ルクス〕が使われます。

一般に照明の質(まぶしさがなく,色の見え方に優れているなど)が良ければ照度は高いほど物が良く見えて視作業が行いやすくなります。しかし照明の質が良くてもおよそ2000ルクスを境に頭打ちが始まります。これ以上照度を高めても作業のしやすさはあまり向上しません。その割には照明費がかかってしまいます。 (図2)

空間には、光源から直接照射された光だけでなく、内装材で反射された光も影響します。
内装材は色や素材によって反射率が異なるため、明るさ感にも大きく影響します。
(「空間の明るさ感」は従来からの照明設計の指標である床面照度や机上面照度などの水平面照度では適切に表現できないことが知られています。*)

良く見えるかどうかは通常の生活視点で目によく入る面の輝度が問題になります。一般には壁面や柱面などの鉛直面が通常視点で目に入りやすいため、そこを明るい仕上げや色で明るく照明してあげることで、空間の明るさ感を高めることができます。

*)……照明学会編:照明学会誌2002年10月号「特集 明るさ感の研究と活用事例」 参照

照明器具は技術革新によってエネルギー消費効率の良いLEDが中心となって環境負荷の少ない高効率なランプに変わりつつあります。より少ない電力で照度を得ることができます。しかしそのような照明が場にあった雰囲気(楽しさ、美しさ、活気、くつろぎ等)まで創り出しているかは別問題です。効率だけに固執した照明ではなく、雰囲気を考慮した正しい意味での省エネ照明を目指すことを忘れてはなりません。

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